[ 乳がん・ホルモン療法 ]


これは、乳がんの治療中に「手が壊れた」3ヶ月の話です。

抗がん剤が終わり、放射線が終わり、やっと普通の生活が戻ってきたと思っていた矢先に、新しい敵がやってきました。


ホルモン療法が始まって2ヶ月後のこと

乳がんがホルモン受容体陽性の場合、手術後に長期のホルモン療法が続きます。私もその一人でした。

ホルモン療法が始まって2ヶ月が経った頃、右手の親指の付け根に、なんとも言えない違和感が出始めました。

最初は「ちょっと腱鞘炎かな」くらいに思っていた。でも日に日に痛みは強くなっていって、ある朝、手首を少し動かした瞬間——

「バチン!」

弾けるような衝撃が走りました。痛みというより、何かが外れるような、嫌な感触。そしてそれ以来、「次はいつ来るのか」という恐怖で、手首を動かすのが怖くなりました。


主治医に「副作用じゃない」と言われた日

手の痛みが続く中、まず乳がんの主治医に相談しました。「ホルモン療法の副作用ではないですか?」と聞いてみた。

返ってきた言葉がこれでした。

「ホルモン療法でドケルバン病になるなんて、聞いたことがないですよ」

否定された。

孤独でした。両手が壊れていくのに、その原因が自分の治療かもしれないのに、「関係ない」と言われる。一人でインターネットを調べ続け、同じ症状を訴えている人たちの声を拾い集めながら、自分で整形外科を探しました。


大阪で出会った整形外科医の「1秒診断」

自力で見つけた大阪の整形外科。

診察室に入り、ホルモン療法中であることを告げた瞬間、先生は即座に言いました。

「ああ、ホルモン療法の副作用ですね」

1秒でした。

「娘が乳腺外科医なんです。そういう患者さんをよく診ますよ」

その一言で、ずっとひとりで抱えていた「気のせいじゃないか」という疑念が、すっと消えた気がしました。信じてもらえた。原因が分かった——それだけで、ようやく前を向けました。

診断はドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)。親指を動かす腱が通っている腱鞘が炎症を起こし、腱がうまく滑れなくなる病気です。

そして右手の治療を始めてからさらに1ヶ月後、今度は左手にも同じ症状が出ました。両手同時に、ドケルバン病。


事務職の絶望:キーボードが打てない

私は事務職です。仕事でパソコンを使わない日はありません。

大阪の先生との初診で手術を決めたものの、予約がすぐには取れませんでした。その待機期間と、先生に出会うまでの間——両方を支えてくれたのがサポーターでした。

でも、両手を固定具で固めた状態では、キーボードがまともに打てない。

  • 左手:金属プレート入りのハードサポーター(ガチガチに固定)
  • 右手:医師と柔道整復師がW監修したハードサポーター

固定すれば痛みは和らぐ。でもキーボードが打てなくなる。 緩めれば仕事はできる。でも「バチン」が来る。

このジレンマを、毎日繰り返していました。会議中にこっそりサポーターを外して、激痛に顔を歪めながら議事録を打つ。誰にも言えない苦しさでした。


使っていたサポーター2種

大阪の先生に出会うまでと、手術待ちの期間にお世話になったのが、この2つです。

左手:金属プレート入りサポーター(強固定)

手首全体をがっちり固定してくれる金属プレート入りタイプ。動かさないことが最優先の夜間や休日に重宝しました。プレートが手首の動きをしっかり制限してくれるので、寝ているあいだに無意識に動かしてしまう心配が減ります。

手首サポーター 金属プレート入り(左手用)

手首サポーター 金属プレート入り(左手用)

右手:医師×柔道整復師W監修 親指サポーター

楽天でランキング1位を獲得した実績のある親指専用のハードサポーター。2本のボーンが内蔵されており、親指の付け根の腱鞘部分をしっかり固定します。左右兼用で、セルフストレッチの解説書も付属。仕事中の「できる範囲で固定する」場面に使っていました。

親指サポーター 医師×柔道整復師W監修 ハードタイプ

親指サポーター 医師×柔道整復師W監修 ハードタイプ


皮下腱鞘切開術という選択

初診のとき、大阪の先生に「手術しましょう」と言われ、即決しました。サポーターで騙し騙しやってきた日々を思えば、迷う理由はなかった。ただ、手術の予約はすぐには取れなかった。その待機期間もサポーターと共に乗り越え、ようやく手術当日を迎えました。

皮下腱鞘切開術——局所麻酔で、数ミリの小さな切開。腱を圧迫している腱鞘を切り、腱の通り道を広げる手術です。時間にして数十分、日帰りで受けられます。

そして術後2日後——絆創膏が取れました。

手首を動かしてみた。「バチン」が来ない。親指を曲げてみた。何も起きない。ただそれだけのことなのに、なぜか涙が出そうになりました。あの毎朝の恐怖が、なかった。


【おまけクイズ】神業の傷跡を探せ!

実際に手術を受けた私の手首の写真を載せます。さあ、どこが手術の跡でしょうか? 10年前とはいえ、じっくり探してみてくださいね。

手術後の手首の写真。ほとんど傷跡がわからない状態。どこに傷があるか探してみてください。
どこが手術の跡か分かりますか?

(※正解は少し下にスクロール!)

正解は……ここでしたー!

正解画像。赤丸で示した場所に、シワに紛れるほど小さな傷跡がある。
赤丸の部分が傷跡。ほぼ見えない!

なんと、この小さな点のような跡だけ! 「皮下腱鞘切開術」の神業、恐るべしです……。


同じ痛みを抱えている方へ

ドケルバン病やバネ指は、ホルモン療法の副作用とは気付きにくい症状です。

「副作用じゃない」と言われた私のように、自分の症状を否定されたり、孤独に痛みを抱えたりしている方がいるかもしれない。

でも、原因があるなら、対処もある。

諦めないでほしい、と思います。私は手術まで選びましたが、軽症であればサポーターと安静で改善するケースもあります。まず整形外科へ行くこと、そして「乳がんのホルモン療法中である」ことをきちんと伝えること——この2つが、私が一番伝えたいことです。

あなたの手が、また自由に動く日がきますように。


本記事は個人の体験に基づくものです。症状や治療については、必ず主治医・専門医にご相談ください。